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静岡地方裁判所 昭和43年(わ)302号 判決 1969年5月16日

被告人 甲野乙郎(昭二七・一・一六生)

主文

被告人を無期懲役に処する。

理由

(被告人の経歴および本件犯行に至るまでの経緯等について)

被告人は、静岡県焼津市○○○×××番地の○において鮮魚行商を営む父、母の長男として出生し、両親の養育のもとで同市内の小、中学校を卒業したが、小学校五年の頃質屋の倉庫から日本刀を盗み出して警察に補導されたことがあり、又中学三年の頃から友人に教えられて学用品、プラモデル等の万引を覚え、昭和四二年三月末頃には中学担当教諭の反対を押し切つて○○工業高等学校機械科を受験して失敗し、同じように受験に失敗した友人と共に家出して上京する途中沼津駅で下車し、プラモデル、レコード等を万引して鉄道公安官から補導される等のことがあつた。

昭和四二年三月中学卒業後、高校進学のため○○学園大学予備校付属高校コースに入学して勉強を続けていたが、次第に学習意欲を失つてきたうえ、静岡市内のデパートで水中メガネを盗んだのを警備員に発見され同校に知らされそうになつたこともあつて同年八月には進学を断念して同校を中途退学し、静岡職業安定所の紹介で同月○○日から富士市○○○の○○自動車株式会社○○工場の工員として同工場の寮に住込んで稼働しているうち、次第に仕事が単調なため興味を失い、社内の食堂から献立サンプルを盗み出そうとしたり深夜社内の弘済会売店に侵入しようとしたところを会社側に発見され、自作の合鍵などを所持していたことまで発覚したため、翌昭和四三年四月○○日同会社を諭旨退職せしめられるに至つたので、同月××日から静岡市○町○○番地の○△△△△△株式会社に雇われ同会社の寮に住込んで自動車整備見習工として稼働するようになつた。

ところで被告人は、背が低く腕力も弱いため同級生等にいじめられても対抗することができない悔しさを紛らすためもあつて中学校時代から拳銃に興味を持つようになりモデル拳銃を購入して蒐集し始め、前記○○自動車株式会社に勤務していた頃モデル拳銃を改造して実際に発射できるように試みたりして楽しんでいたが、△△△△△株式会社に勤務するようになつてから被告人がとかく同僚に高言を吐いたり横着な態度を示したので、先輩格の同僚○山○夫の反撥を買い同人から三回位殴られたり蹴られたりして乱暴な仕打ちを受けたため同人を深く憎むようになつたものの、同人に較べて体格、体力共に劣弱で同人に立向う勇気もないまま過ごすうち、かねてから拳銃の模型では飽き足らず実物の拳銃を欲しいと思つていた矢先でもあり、実物の拳銃を手に入れてこれを誇示して○山に威圧を加えてやろうと考えるに至り、実物の拳銃を手に入れることに執心していた。

(罪となるべき事実)

被告人は、前記○○自動車株式会社○○工場に稼働中

第一  (一) 昭和四二年一二月○○日午前一時頃静岡県富士市○○○×××番地の○○○自動車株式会社○○寮北寮一〇七号室において○□○基ほか一名の所有する現金三万九、七〇〇円を窃取し

(二) 同四三年一月○○日午前一時頃右○○寮中寮二二六号室において、柳○雄ほか一名の所有する現金四万一、〇〇〇円を窃取し

(三) 同年三月○日午後五時頃右○○寮北寮二二二号室において○村○男の所有するポータブルテレビ一台(価格約三万五、〇〇〇円相当)を窃取し

(四) Aと共謀のうえ、同月中旬頃の午前一時頃同市○○○××番地の○の○食品販売業「○○屋」こと○木○作方ガレージ内において、同人の所有するコーラ二箱(価格三、〇〇〇円相当)を窃取し

第二  同月下旬頃、前記○○自動車株式会社○○寮南寮内の自室において前記Aから同人が他から窃取してきたトランジスターラジオ一台(価格約一万一、〇〇〇円相当)の売却方を依頼されるや、それが賍品であることを知りながら、その頃同寮の南寮二一四号室においてこれを○藤○孝に金五、五〇〇円で売却してやり、もつて賍物の牙保をなし

前記△△△△△株式会社に稼働中

第三  (一) 同年五月中旬頃の正午頃静岡市○町○○番地の○同会社事務所裏部品置場内において同会社社長大○伊○雄の保管するカーラジオ一台(価格約六、〇〇〇円相当)を窃取し

(二) 同月下旬頃の午前一〇時頃同市同町○○番地の○同会社中古車展示場内において前同人の保管するカーラジオ(スピーカー付)一台(価格約六、五〇〇円相当)を窃取し

(三) 同年六月○○日午後七時頃同市○○町○番地の○ニユー○○○ビル四階サウナブロ更衣室において○井○夫の所有する現金五万〇、五〇〇円および腕時計一個ほか雑品四点(価格合計約一万一、〇一〇円相当)を窃取し

(四) 同月△△日午後八時頃同市○○○町○○番地○○○専用駐車場において、○田○道の管理する軽四輪貨物自動車(六静岡う○○-○○号)一台(価格約一三万〇、〇〇〇円相当)を窃取し

(五) 同年七月○日午後九時頃同市△△町○○番○○号株式会社○○○○○駐車場において、同会社社長○石○七の所有する軽四輪貨物自動車(六静岡き○○-○○号)一台(価格約二五万〇、〇〇〇円相当)を窃取し

(六) 同月△日午前三時頃同市××町××番地杉○豊方路上において、○野○一の所有する軽四輪貨物自動車(六静岡か○○-○○号)一台(価格約六万〇、〇〇〇円相当)を窃取し

第四  公安委員会の運転免許を受けないで、同日午前六時一〇分頃同市○○○○町○○番地付近路上において、前記第三の(六)掲記の軽四輪貨物自動車(六静岡か○○-○○号)を運転し

第五  同日午後四時頃焼津市○○○△△△番地の○付近空地において、○久○真○九の所有でかつ同人の占有を離れて同所に放置されてあつた軽四輪貨物自動車(六静岡く○○-○○号、価格約一〇万〇、〇〇〇円相当)を発見するや、これを領得しようと決意し、同車に乗つて静岡市方面に向い運転進行し、もつて横領し

第六  冒頭掲記のようにかねてから実物の拳銃の入手を願望していたが、そのためには警察官から拳銃を盗取する外ないと考えるようになり同年七月×日夜外出した際前記第三の(五)掲記の窃取した軽四輪貨物自動車に乗つて、静岡中央警察署井之宮警察官派出所、同宮ケ崎警察官派出所、同大岩警察官派出所等静岡市内の各交番を見て迴り、翌同月□日も会社には戻らず引続き右自動車を乗り迴して拳銃を盗めないかと同市内の交番の様子をうかがつたが、拳銃の保管場所が判らないうえ盗む機会もなかつたので、盗むことを諦め、ハンマーで交番の警察官を殴りつけその隙に拳銃を奪い取ろうと考えつき、同月△日午後焼津市に赴き同市内の金物店で大型金槌一丁(昭和四三年押第九九号の三)を購入し、これを紙製手提袋に入れて携え、焼津警察署港警察官派出所に行き警察官に道を尋ねる振をして近ずき隙があつたら右金槌で殴打して拳銃を奪い取ろうとしたが果さず、更に同署焼津駅前警察官派出所へ行き同様の方法で拳銃を奪い取ろうとしたが恐しくなつて諦め、前記第五掲記の横領した軽四輪貨物自動車(六静岡く○○-○○号)で静岡市に戻り、同日夕刻から静岡中央警察署弥勒警察官派出所、同安東警察官派出所等を見て迴つたが、結局金槌で警察官を殴つて拳銃を奪い取ることの実現困難であることを覚つた末、パトロール中の警察官に自ら乗り迴していた右軽四輪貨物自動車を激突させてその警察官の所持する拳銃を奪い取ろうと考えるに至つた。

そこで同月▲日も同車を運転して前同様静岡市内の警察官派出所数個所の様子を見て迴り同夜は同市△△町○○番地映画館「○○座」に入り映画を暫時見た後同館のロビーのソフアーで仮眠し、翌◎日午前三時頃になつて目を覚まして再び同車に乗つて出発し、同市安東二丁目所在の静岡中央警察署安東警察官派出所の警察官を襲おうと思い、同派出所から約一五〇メートル東方の城北アパート南側の路上に東方を向けて停車し、車内からルームミラーを通して西方の右派出所の様子をうかがいその機会を待つうち、同日午前五時頃偶々同派出所から出て来た同署縁町警察官派出所巡査鈴○与○郎(当時五〇年)が拳銃を右腰に装着し自転車に乗つて自車の側方を通過したのを認めるや、直ちに右自動車を運転発進させてそのあとを追尾し、同市○○×丁目○番○○号付近の国立○○病院西側路上にさしかかつた際、それまで進路左側を先行していた同巡査の自転車が道路中央寄りに進出してきたので、同車を同人に衝突させて殺害したうえその所持する拳銃を強取しようと決意し、同巡査の約二〇メートル後方からアクセルを一杯に踏み時速約四-五〇キロメートルに加速して自車前部中央付近を右自転車後部に激突させて同巡査を前方路上に転倒させたうえ車体の下敷にしたまま約三〇メートル程引きずり、その衝撃等により同人に対し脳実質損傷を伴う右側頭骨陥没骨折、両鎖骨々折、左右肋骨々折等の重傷を負わせて人事不省に陥らしめ、その場で同人が携帯していた実包五発入りのコルト四五口径自動式拳銃(番号第二〇三〇七七五号)一丁を強取し、よつて同巡査をして同月○○日午前三時五分頃同市□□町○丁目○○番地静岡県立○○病院において前記頭部外傷に基く脳軟化症のため死亡させて殺害し

第七  同月◎日午前五時過ころ同市○×町○番○号○○○公会堂自転車置場において、村○祐目所有の中古自転車一台(価格約一万〇、〇〇〇円相当)を窃取し

第八  法定の除外事由がないのに、同月◎日午前五時頃から同月△△日までの間前記第六の犯行により入手した拳銃一丁および実包五発を同市○町○○番地の○△△△△△株式会社寮自己居室内等において所持したものである。

(証拠の標目)(略)

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は、被告人が本件第六の犯行当時心神耗弱の状態にあつた旨主張するので、この点について検討するに、医師溝口正美作成の精神鑑定書、被告人の司法警察員に対する昭和四三年七月一六日付および検察官に対する同月二四日付各供述調書並びに○石○雄(二通)○石○子こと○石○つの司法警察員に対する各供述調書によれば、被告人に対する昭和四三年一二月一八日実施の脳波検査にも病的異常所見は認められず、遺伝歴においても被告人の近親家系中に病的精神障害者はなく、被告人に病的精神異常の遺伝的素因の負荷を証明できない。 又生活史において被告人は心身の発育普通で著患はないが、小学校二年生の頃から盗癖を現し、次第に著しくなつていること、身体的現在症状には特記すべき病的所見を認めないこと、精神的現在症状にも著しい病的精神異常を認めず、知能程度は上位にあるが、性格的には内閉性変調、意志欠如変調の特徴が著しく、過敏性、不安定性の傾向があり、道徳的知識は偏倚して道徳感情は未熟であり、現在は金銭に対する執着が異常に強いことなどに徴し、被告人は狭義の病的精神異常および知能的欠陥のない、いわゆる精神病質者ではあるが、○産○○工場、△△△△△株式会社の各工員として勤め、その間工員としては殆ど普通に近い仕事振りを示し寮生活をしていたことからみて社会的生活能力が全く失われた状態とはいえず、従つてその病質の程度も重症でないことが明らかであつて、犯行の動機も幻覚、妄想等の病的知覚又は病的思考に支配されたものではないのみならず、犯行当時の被告人には意識混濁又はもうろう状態等の病的意識状態はなく、病的な精神運動興奮状態を示す所見も認められなかつたことなどから、被告人の本件第六の犯行当時の精神状態には狭義の病的精神異常はなく、性格の偏倚した未だ重症とは言えない精神病質の精神状態にあつたことが認められる。

しかも被告人の司法警察員および検察官に対する各供述調書および同人の当公判廷における供述によれば、被告人は第六の犯行に至るまでの経緯、その動機、手段方法、犯行後の事情等について終始明確な記憶に基き詳細に述べていることが認められる。また、被告人の少年調査記録を仔細に検討してみても、被告人が精神病質であることは窺われるが、その程度が重篤であるとは認められない。以上の諸事実を考え合せると、被告人は、性格に偏倚のある精神病質者ではあるが、その程度も重症ではなく、本件第六の犯行当時是非善悪を弁別し又はその弁別に従つて行動する能力を著しく欠いてはいなかつたことが明かであり、所謂、心神耗弱の状態になかつたことを認めるのに十分であり、弁護人の主張は理由がないから採用しない。

(法令の適用)

被告人の判示第一の(一)乃至(三)、第三の(一)乃至(六)、第七の各所為はいずれも刑法二三五条に、同第一の(四)の所為は同法六〇条、二三五条に、同第二の所為は同法二五六条二項、罰金等臨時措置法三条一項一号に、同第四の所為は道路交通法一一八条一項一号、六四条に、同第五の所為は刑法二五四条、罰金等臨時措置法三条一項一号に、同第六の所為は刑法二四〇条後段に、同第八の所為中銃砲刀剣類所持等取締法違反の点については同法三一条の二第一号、三条一項に、火薬類取締法違反の点については同法五九条二号、二一条に各該当するが、同第八の銃砲刀剣類所持等取締法違反の所為と火薬類取締法違反の所為とは一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条により一罪として重い銃砲刀剣類所持等取締法違反罪の刑で処断することとし、同第四の道路交通法違反罪についてその所定刑中罰金刑を選択し、第五の占有離脱物横領罪についてその所定刑中懲役刑を選択し、同第六の強盗殺人罪について後記理由によりその所定刑中死刑を選択し、同第八の銃砲刀剣類所持等取締法違反罪についてその所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪に該当するが、被告人に対し死刑をもつて処することになるので、同法四六条一項本文により他の刑を科さず死刑をもつて処断すべきところ、被告人は判示第六の犯行当時満一八歳に満たない少年であるので、少年法五一条前段により被告人を無期懲役に処し、訴訟費用については刑事訴訟法一八一条一項但書により被告人に負担させないこととする。

(量刑の理由)

本件判示第六認定の強盗殺人罪は、被告人がかねてから拳銃に対し異常な程の興味を持ち、モデル拳銃を買い集めて楽しんでいたが、次第に実物の拳銃が欲しくなつたことと偶々勤務先△△△△△株式会社において同僚の○山○夫から被告人の横柄な態度を憎まれて乱暴な仕打ちを受けたのを怨み、ついに腕力ではかなわないので実物の拳銃を入手して同人を威迫してやろうと考えるに至つたことに端を発しており、その犯行の動機の点で何ら同情すべき点は認められない。

しかも実物の拳銃を入手するため警察官の拳銃に目をつけ、犯行のかなり前から静岡、焼津の各市内の各警察官派出所を見て迴り、当初は盗取の機会をうかがいその機会がないと見るや、金槌で警察官を殴打してその隙に拳銃を奪取しようと企て、金槌を用意してその機を狙つたが果さず、ついに自動車を警察官に激突させその装着する拳銃を奪取しようと決意しこれを実行に移したものであつて、極めて冷静かつ大胆で計画的な犯行といわざるを得ない。

又その犯行の態様たるや、自転車に乗つて何事も知らずに行く鈴○巡査の約二〇メートル後方からアクセルを一杯に踏み込み時速約四-五〇キロメートルに加速して本件軽四輪貨物自動車の正面を自転車の後部に激突させ、同巡査をボンネツト上にはね上げ、更に舗装道路上に転落した同巡査を自車の下敷にしたまま路面にバウンドするように約三〇メートル程も引きずつており、その結果同巡査に対し致命傷である脳実質損傷を伴う右側頭部の陥没骨折のほか両鎖骨々折、左右肋骨々折等その他全身にわたる多数の擦過傷を負わせたものであつて残虐極まる犯行といえよう。

被害者は二〇年余職務を忠実に勤めてきた真面目な警察官であり、多くの賞や賞誉を受けたほか静岡東ロータリークラブから感謝状を贈られるなど勤務成績は優秀であつたが、被害者にとつて全く予想もしない突如の襲撃に遭遇し右のように被告人に拳銃を奪われ惨死を遂げざるを得なかつた被害者の無念さを思うとき、その肉体的精神的苦痛はいかばかりであつたか察するに余りあるものがあるのみならず、その妻と両親、娘二人の平和で円満な家庭生活が被告人の冷酷な犯行によつて一瞬にして破壊され、夫或いは父を奪われた遺族の悲痛な思いははかり知れないものがあり、誠に同情を禁じ得ない。しかも被告人側からは一度両親が焼香に訪れたほか何らの慰藉も講じられておらず、被告人自身も恬として反省の色を示さざる態度に対し、被害者の妻が厳罰を望むのも至極当然のことといわねばならない。又被告人を今日の性格にまでに立ち至らせた原因としては、被告人の生来的な素質に加えて両親が不和であつたほかその家庭内に不安定な性格を助長する一因があつたこと及び昨今の学歴偏重の社会風潮が高校受験に失敗した被告人の心情に少なからぬ影響を及ぼしたことは否定できないとしても、その性格面の偏りを克服しようと努めることなく放縦な生活態度を続けて省みず、その反社会的傾向を自ら助長して行き、遂に本件重大事犯を惹起するに至つたことは、被告人にその責任の大半があると言わざるを得ない。しかも被告人は夙に小学校の頃から盗癖を現し、中学校の頃には万引を覚えて警察からも補導されており、就職後も判示認定のように矢継早に窃盗を反覆累行しており、次第に常習化の傾向をたどつていることが見られるほか、日頃の生活態度も自己中心的で自分の好きなことなら熱心にやるが、とかく忍耐力に乏しく同僚との協調性も欠けており自分にそれ程実力がないのに自己を顕示したがり、そのため△△△△△株式会社に勤務している頃同僚達の憎しみを買つたことは寧ろ事の自然な成行ともいえよう。殊に本件強盗殺人の如き重罪を犯しながら、何ら反省の色も示さず、寧ろ逮捕されなかつたならば拳銃を使用して強盗を行い大金を奪取するつもりであつたなどと述べ、一片の道徳感情をも持ち合せていないかの如き言動が見られること等を合せ考えると被告人は判示第六の犯行当時満一六歳、現在未だ一七歳の若年ではあるがもはや被告人の反社会性は容易に矯正し難い段階に達しているものと認めざるを得ない。

更に本件強盗殺人の犯行は現職の警察官を自動車で轢殺して携帯していた実砲入り拳銃を強奪した事件ということで、当時社会の耳目を聳動させたのみか、同拳銃を使用して第二の兇悪犯罪の発生することが警戒され、一般市民に多大の不安を与えた点で社会に対する影響も極めて大きいことが認められる。

以上の事実並びに情状を考慮すれば、この際被告人にとつて有利な事情を一切斟酌してみても判示強盗殺人罪についてその所定刑中死刑を選択せざるを得ないが、被告人は右犯行当時一八歳未満であつたから、少年法五一条前段を適用して無期懲役を科し、主文のとおり量定した。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石見勝四 裁判官 高井吉夫 裁判官 河合治夫)

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